プロダクトライフサイクル(PLC)における事業とプロダクトのズレを埋める3つのポイント
この記事は プロダクトマネージャー Advent Calendar 2020 10日目の記事となります😁
グロービスで「グロービス学び放題」という動画のサブスクサービスのPdMやっている染谷洋平と申します。紆余曲折な学歴・職歴なのでもし興味あれば、以下から御覧ください。
今回は、プロダクトライフサイクルにおける内容です。2019年1月にグロービスにジョインして以来、2年弱の間にあった実際の体験を元に、事業(いわゆる、”ビジネス”)とプロダクトでギャップが生まれた時にどうすべきかということをまとめてみました。
プロダクトライフサイクルとは?
もともとは、製造業の”製品”にまつわる時間の推移に伴う売上高の変化を示したものです。時間を横軸、売上高を縦軸とし、通常、「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4段階を経ながらS字型のカーブを描きます。それぞれの段階で、製品と利用方法についての顧客の理解度の違い、競合の強さの違い、マーケティング組織の発達段階の違いなどにおいて特徴が見られ、それに伴ってマーケティング戦略課題が異なってくるため、おのずとマーケティング戦略も違ったものとなります。
製造業だけでなく、デジタルプロダクトにも同じ概念ができようでき、多くのデジタルプロダクトでも、この概念を参考にしながらプロダクトロードマップを引くことも多いのではないでしょうか?
なぜ事業とプロダクトでライフサイクルがズレるのか?
過去の起業経験からも、ゼロから会社を作って、プロダクト開発を行っていく場合は、事業とプロダクトのライフサイクルが大きくずれることは無いと思います。
しかし、既存の事業があり、プロダクト毎ではなく、ファンクション毎に組織が構築されている場合は、事業とプロダクトのライフサイクルがずれる可能性があります。例えば、グロービスはすでに28年の歴史を持つ会社であり、法人研修の提供や経営大学院の運営を行っております。2017年にグロービス学び放題が個人/法人の両方にリリースされた時にはすでにプロダクト開発を行う部署と法人営業を行う部署は分かれており、営業部署の「営業力」で売上が立ってしまう部分があったのだと思います。つまり、PMFが検証される前に、人材やプロダクトへの投資が先行し、コアバリューがよくわからないあるいは、組織での共通認識が取れないままプロダクトが大きくなってしまいます。その結果、事業面では売上の増加が見込めるので、どんどん販促を行っていく「成長期」だけど、プロダクト面ではユーザーにどんな価値提供ができており、ユーザーが何を不満に感じるのかがわからずまだ「導入期」にとどまってしまうということが起きてしまいます。
ちなみに、初期投資あるいは、事業から生み出された資金をプロダクト開発に投資する流れが一般的だと思うので、プロダクトが事業に先駆けて、プロダクトライフサイクルの先のフェーズに移ることはあまりないと思います。
事業とプロダクトでライフサイクルがズレると何がまずいのか?
コアバリューが曖昧なままプロダクト開発が進むとどんな事が起きるのでしょうか?現場のメンバー、主にPdMを中心とするミドルマネージメント、組織全体で、それぞれ以下の点に集約されると思います。
- 様々な情報が散らばり、キャッチアップコストがかかり、生産性が下がる
多方向にプロダクトが開発されてしまうと、価値追求のためではなく、機能追加のための開発が起こりやすく、実際にコーディングやUI作成に携わる現場のメンバーからすると、自チームでやっている内容と他チームでやっている内容のつながりや他チームのアクションの背景が見えにくくなってしまう。その結果、自チーム以外の動きを把握しようとするとゼロから背景を確認する必要が出てきたり、チーム間の思想の違いにプロダクト開発で手戻りが発生してしまいます。 - 優先順位付けが難しくなり、意思決定精度が下がる
現場がそれぞれの機能を開発するようになると、そのうち機能間で優先度付けを行うタイミングがきます。その時に、それぞれの機能が別のゴールを持っている場合、優先度を決める軸がないケースが多く、Apple to Appleでの比較ができなくなってしまいます。 - プロダクトビジョンの解像度が下がり、組織のエンゲージメントが下がる
開発組織内だけでなく、開発組織-非開発組織間のシナジーを生み出していく点でも難しい部分が出てきます。多くの会社では、経営者の判断は事業のフェーズに基づいて行われることが多いので、事業目標達成に向けたプレッシャーが強くなり、唐突に文脈のわからない開発要望がでてきたり、開発リソースが足らない部分では労働集約的な作業が強いられたりするケースが多いのではないかと思います。その結果として、個人レベル、チームレベルでじっくり考える余裕がなくなってしまい、組織内のエンゲージメントが下がってしまいます。組織内のエンゲージメントが下がると、退職者がつづくなどの最悪のケースも考えられるので注意が必要です。
ズレを埋めるための3つのポイント
残酷かもれませんが、すぐにズレをなくすことは不可能です。ズレを埋めるために、事業のスピードを止めることは意思決定できませんし、プロダクトにおけるPMFの検証は試行錯誤を繰り返すしかないと思います。
しかし、ズレを認識し、将来的にそのズレを解消するためには、3つのポイントがあります。最初の2つは実際にやってみて効果があったこと、最後の1つは現在も進行中ではあるが効果が見えてきていることになります。
Point1: コミュニケーション
当たり前に様に聞こえるかもしれませんが、コミュニケーションを取ることはとても大事です。特に、情報格差を埋めるためのコミュニケーションが重要であると感じています。優れたメンバーでチームが形成できているなら、尊敬と信頼の念を持って、情報を的確に伝えることが大事だと思います。経験上、多くの情報が錯綜する状況下では、スキル不足による問題よりも知識不足による問題の方が多いです。つまり、「知らないから、わからない」状態があり、その状況改善には「知ってる」状態を作ってあげればよいのです。「知ってる」状態を作るためには、口頭の説明もあれば、ドキュメントを整理するのも良いし、絵に書くなどその手法は、対象者に最適化すべきだと思います。また、時間がかかるプロセスだと理解し、即時的な効果は求めないほうが気分的に楽だと思います。
個人的に、最近一番有効だと思うのは、自分が説明している動画を撮ってシェアすることです。ちょっと恥ずかしいですが、口頭説明に代替できると思っています。
Point2: 愚直さ
まさに書籍の名前でもある通り、「正しいものを正しくつくる」。それを愚直にすることが、結局は一番の近道になると感じています。例えば、スクラム開発でのPOとしてステークホルダーに説明する時に、「目に見えないとわからないなぁ。」と感じるのであれば、愚直に目に見える形で提供してあげるべきです。また、これも反響が現れるまでには時間がかかるものであると覚悟が必要です。KPIツリー(下図)も、最初は「サービスの改善を考える上で、KPIツリーが必要だよね」と言いながら、全然作られなかった時期があったのですが、今では5チーム以上で共同で運用されるようになりました。その結果、作業の重複などがなくなったり、意思決定の判断軸としても役立ち、施策スピードもだいたい2-3倍になりました。
Point3: 未来のストーリーテリング
「正解なんてない」、「この先何が起こるのか予測不可能である」というのが、今の時代です。だからといって、「一緒に考えていこう!」と言うだけでは、何も始まらないと思います。その時に、「◯ヶ月後には✕✕なユーザーが多くなっているから、その時に△△を満たす機能が必要で…」というように、たたき台になるストーリーを常に持つことが必要です。先述の通り、すぐにズレを埋めることは現実的ではないかもしれませんが、そこのストーリーを考えることで、組織全体で目線を合わせていくことはとてつもないインパクトがあると思います。コツとしては「3T」で、「いつ(Timeline)、どんなユーザー(Target)にとって、何が宝になるのか(Treasure)」を考えることだと思います。
一度、それぞれのプロダクトライフサイクルのステージを考えてみてはいかがでしょうか?僕の経験が何かの参考にあればと思います。
最後に…
まだまだテックなイメージがないグロービスですが、社内のエンジニアやデザインナー、PdM、事業責任者が自分の好きな内容で記事を書いてます。採用活動もガンガンしております^^
よろしければ、御覧くださいーmm
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今年も残り僅かですが、良いお年を…