サッカーの理論がプロダクトと組織マネジメントに活きる
GLOBIS Advent Calendar 2022 の3日目の記事として、久々に普段考えているプロダクトと組織マネジメントにまとめてみたいと思います。そして、ちょうどW杯の日本vsスペイン戦の1時間前に書き終わりましたw
是非、スペインに勝って、決勝トーナメントに進んで欲しい!!
はじめに
今年に入って、「アオアシ」というアニメがあることを知り、仕事しながらアニメの第1クールをU-NEXTで見ていたのですが、サッカーの理論がデジタルプロダクト開発や組織マネジメントなど普段の業務にめっちゃ活きてることを実感したので、「アオアシ」と今作っている「ナノ単科」を題材に紹介していきます。
ナノ単科とは
ナノ単科はグロービス経営大学院が2021年10月から提供している新しい教育プログラムです。最近UdemyやSchooなどのように動画学習はもちろん、大学院教員によるリアルタイムの授業やAIを使ったラーニングコンテンツ、受講生同士のグループワークを通じて、学んだことを実際の仕事でも試せるようになるように設計されています。
技術的には、フロントエンドはFlutter、バックエンドはRailsをメインに採用しております。開発メンバーの半数以上が副業や兼業などで週2−3日稼働となっており、各自のやりたいことを、好きな時に好きなだけやれるような組織運営を行なっています。
サッカーをやっててよかった4つのポイント
幼稚園の年長から高校までの間、主にサイドバック〜サイドハーフでサッカーをやってました。左サイドだったので、だいたい長友選手の位置でした。アオアシを見て気づいた、チームでユーザー価値を向上させる4つのポイントを紹介します。
あくまでも個人的な見解ですが、チームメンバーが互いを尊敬し合うことと、この4つのポイントがあれば、かなり高い品質のプロダクトとそれを継続する体制が作れると思っています。
1. 意思決定スピードと判断の質を担保するための「トライアングル」
サッカーの観点では常に2つ以上のパスコースを作ることで相手にボールを取られないようにするという意味で「トライアングル」が大事になってきます。
プロダクト開発の観点でいうと、専門性が違う3人でそれぞれの課題に取り組むことが良いと感じます。2人だと意見が割れた時にどうしても対立したり、人数が多すぎるとコミュニケーションコストがかかったり、誰も意思決定しなくなったりしてしまうので、3−4人がベストです。
スクラム開発する時も3人いればできますし、新しいサービスの立ち上げをする時も3人(例えば、エンジニア、デザイナー、ビジネスサイド)いれば十分に行うことができます。また、3人程度であれば、組織が大きくなった時に必要なドキュメント整理の重要性もそれほど高くならず、よりプロダクトの開発に集中できる体制になります。
2. 事業というフィールド全体を「俯瞰」
サッカーは足でボールを扱うので、プレー中はそのボールを見るために、どうしても目線が足元に向いてしまいます。そのため、選手は可能な限りボールを受ける前に回りを見渡し、相手や味方の選手の位置、選手の動き出しを把握します。
サッカーではグラウンドが”フィールド”となりますが、プロダクト開発では何が”フィールド”になるでしょうか?チームだけではなく、事業全体を”フィールド”として考えると良いです。チームと連携する人々もそうですし、チームにとってのレポートライン、事業に影響を与える世の中の動き、人材獲得まで考えておくべきでしょう。例えば、スクラム開発でベロシティを気にするのも大事ですが、スクラムチーム以外の動きも実際のプロダクト開発に大いに影響を与えることがあります。事業拡大する時には、組織拡大も起こるのでプロアクティブに人材獲得のプランニングも常にしておく必要があります。最近、ナノ単科では、プロダクトのフェーズが立ち上げ期から、グロースを目指すようになったため、データ系人材のリソースを倍増しました。
”フィールド”全体を俯瞰して見れるようになっていたら、うまく事業が進みそうかどうかもわかるようになります。逆にその見通しが立たない場合は、何か見落としている点があるのかもしれません。
3. メンバーの「スキルの厚さ」
アジア勢に比べたら、ヨーロッパ勢やブラジルが安定して強いのはまさにメンバーの層の厚さでしょう。W杯でも、日本の富安や遠藤が怪我をしていましたし、イエローカードやレッドカードをもらい出場停止になる選手も出てきます。そういう万全じゃない時にも、しっかりと結果を残すために組織の強さを保つ必要があります。
プロダクト開発においては、チーム内にスタメンと控えのような区別はないはずです。ここで言う「厚さ」は、個々のメンバーの「スキルの厚さ」になります。「厚さ」を別の言葉で言い換えると、”幅広く、立体的である”状態が良いと思います。例えば、エンジニアが2人いたとして、2人とも同じようなスキルセットではなく、それぞれの別の強みを持っている方が良いです。また、チームの人数が多くなるにつれ、情報共有のためのコミュニケーションコストは上がります。そのため、チームの人数が多くすれば良いということにはなりません。つまり、人数を求めすぎることなく、メンバーそれぞれの強みが相互補完的に組み合っている状態が理想的です。
相互補完的に組み合っていると、それぞれの強みを他のメンバーが頼ることができ、メンバー間で互いに尊敬してプロダクト開発に取り組めるようになるので、チーム意識の醸成にも繋がります。
4. 戦略的な「配置転換」と実戦を通した「成長」
プロ選手になってからも多少のポジションのコンバートがあります。また、中学や高校の頃などの体も技術も成長している時はFWがCB(センターバック)になったりというケースはあるあるだったりします。「アオアシ」でも主人公がFW→SB(サイドバック)にコンバートするのですが、組織的なサッカーの動きを理解するために監督が仕掛けたことでした。
優秀な人材は、高度な専門スキルと高いレベルの意識を兼ね備えています。プロダクト開発における配置は、新規開発のリードポジションあるいは、マネジメントおよびディレクションのポジションへのアサインになります。新規開発のリードポジションへのアサインは専門スキルの、マネジメントおよびディレクションのポジションへのアサインはチーム開発の意識付けの向上に寄与すると考えてます。
ナノ単科では、QAのメンバーがバックエンドエンジニアになったり、PdMになったり、職種のコンバートを積極的に行なっていたり、先述の2つのポジションを様々なメンバーが経験しながら、プロダクトとともにチームも成長していくように促しています。
最後に
過去に起業したり、雇われ社長をやっていた経験からか、あまりメンバーの一人ひとりをエンジニアとかデザイナーとかの職種の枠に当てはめずにプロダクト開発を行なっています。特に、4つ目の「配置転換」と「成長」はチームメンバー間の交流を促す上に、単なる仕事上のスキルだけでなく、他の人の役割を知ることで認識や認知の幅が広がり、ヒューマンスキルの向上にもつながるのでより戦略的に行うべきだと思います。