サスティナブルなデジタルプロダクト開発組織を作ってみた

youhei19880130
Dec 24, 2021

今年(2021年)の1月に学校法人グロービス経営大学院と株式会社グロービスで新しい教育プロダクトを開発する意思決定がなされました。リサーチに4ヶ月、実装に5ヶ月でリリースした際に、その9ヶ月間に、チームメンバーが6人→18名に増えて、スケーリングしていった話です。

※訳あって、新プロダクトの名前は「■■■■■」と記載させていただきますm(-_-)m

■■■■■を着手する前のチームの状態

PdM 1名 ※自分
エンジニア 3名
デザイナー 1名
データアナリスト 1名

…と比較的小回りが効くチームでした。それまではGLOBIS 学び放題というMBAをベースにした動画のサブスクリプションサービスのグロースを行なっていました。実際には私自身も稼働の30%は別のプロジェクトだったり、メンバー唯一の私以外の正社員も、兼務のためハーフコミットだったので、元から業務委託メンバーのパフォーマンスが肝になるチーム運営をしてました。

チーム規模にミスマッチな■■■■■の開発スコープの大きさ

■■■■■は、動画視聴、記述式学習、オンラインクラスとユーザー同士によるグループワークの実現など複数の学習コンポーネントがMVPで、他のグロービスでのプロジェクトやプロダクト開発を参考にざっくり試算すると100人月くらいでした。一方で、チームの規模は6名なので、どう考えてもやりたいこととリソースがミスマッチな状態でした。

リリースにインパクトした3つの秘策

「モチベートより、Not デモチベート」

私のファースキャリアは、広告代理店業やメディア、ソシャゲーをやっているメガベンチャーだったのですが、その退社理由の一つが"組織が大規模化すると、従業員の一部が不幸になっても気にしなくなってしまう"と感じことでした。それから、自分が組織を作る時は"みんながハッピーに働いている"ことを最優先に考えてます。

そういった考えの中で今回試してみて、結果的にとても良かった事がモチベーションを上げることを考えるのではなく、モチベーションを下げないように何ができるかを考えることでした。モチベーションを上げても、パフォーマンス向上は見込めても20-30%改善だと思います。その一方で、モチベーションが下がると、パフォーマンスは50%になったり、ひどい時には10%まで下がる可能性もあります。

今回、モチベーションを下げないように具体的にしたことは、次の段落で紹介します。

「フェーズに合わせて、スコープを明確にする」

モチベーションが下がり、パフォーマンスを下げないようにした具体的なことをシンプルで、開発スコープを明確に区切ることでした。開発中に何回も「開発が間に合わなさそうなところは全部人力でオペレーション組むんで、不安に思ったら言ってね!」と声をかけ、毎週のMTGでスコープを明確に切りました。その時に、もう一つポイントがあって、個人的な要望は伝えておく事が大事です。つまり、開発メンバーのやらないといけないものは明確にし、もしそれが完了したら次に何をするかをしっかり認識づけしておくことです。

その結果、リリースするスコープは当初予定よりも4回くらい上方修正が入り、一番最初に私自身がやろうとしていたこと以上のことが初期ローンチ時にリリースできました。個人的に、不安だったのは、

「全集中 nanoの呼吸」

最後が鬼滅の刃にかこつけて部門長と話していた何重もの施策リストを用意してました。その内容が以下。

全集中 nanoの呼吸

壱の型:尹さん(正社員エンジニア)が遊撃として開発全体をサポート
弐の型:QAとの連携も大事で、最近入社したタッキー&グッチーさん(瀧口さん。QAメンバー)をJOINさせてもらえると嬉しい(…オカピー(デザイナー)とも元同僚で相性もよく、QAには根回し済み)
参の型:業務委託だからできる「マジでお願いだから、沢山働いて♫」作戦で、リソースを1.5倍くらいにはレバレッジ可能+もう一人エンジニア追加できそう
肆の型:染谷自身も開発する
伍の型:染谷自身の他部署の兼務解消

実際の業務だと、一本槍で挑むケースがなんだかんだ多いと思うんですが、個人的にはなるべく8個くらいバックアッププランを用意しておくように心がけてます。今回は5個でしたが、結果的に「肆の型:染谷自身も開発する」以外は実行に移し、今回は無事開発を完了することができました。

リリースの結果は…

■■■■■の最初のタームが終わり、受講生の方にインタビューやアンケートを実施しているのですが、グロービスへの好感度やNPS、各学習コンポーネントの満足度は非常に高く、学習サービスとしてとてもよりスタートを切れました。

学習サービスでは、如何に受講生に多くの時間を費やしてもらうかがユーザー満足度を上げる鍵になります。勉強や学習自体はつらいもので、できれば避けたいものなので、使いやすさを訴求してもあまりエンゲージメントを高めることはできないと思ってます。それよりも、"小さな投資"を受講生にしてもらい、そのリターンを確かに感じてもらい、それを短いサイクルで繰り返していくことで、徐々に学習時間を増やしていくことができます。そのために、動画を見て知識のインプットを行い、すかさず記述式問題に回答することでアウトプットを行なうことであったり、記述式問題の回答に対して毎回フィードバックを行なう仕組みであったり、全てを非同期の学習にせずオンラインクラスで教員とのインタラクティブな学習の場などを提供してます。

ただ、一方で課題もいくつか顕在化してきました。先述のインプット→アウトプットのサイクルを回していく中で、100〜300字程度のアウトプットを必要としているので、比較的PCでの受講が多い想定でいたので、モバイル端末での使い勝手がイマイチでした。その他にも、もっと受講生間の交流や関係性づくりの価値提供に改善の余地があったり、別の科目も作って欲しいという要望を実際に受講生からもらったりしてます。

今後、つくっていきたいサスティナブルな開発組織

初期ローンチを成功に収め、冒頭に書いたようにチームメンバーも6名→18名になり、プロダクトだけでなく組織もサスティナビリティを高めるために今また新しいアクションをしてます。チームが大きくなった時に、チームメンバー間の人間関係を良くするために、どれだけコラボレーションを増やせるかが大きなチャレンジになると思っています。18名のメンバーのうち、正社員は自分を含めて3人しかいないし、他の15名はフルコミットではない業務委託メンバーです。

そこで、最近始めたのが「デッチー!」という取り組みです。シニアメンバーがジュニアメンバーが教育、育成するというのは、正社員だと当たり前なことですが、それを業務委託が業務委託をやっても良いんじゃないかと思ったのがきっかけです。シニアメンバーを"師匠"、ジュニアメンバーを"弟子"として、3ヶ月間の目標を設定し、チーム内で公表してもらいます。どんどんチャレンジしてもらいたいので、3ヶ月後に目標の50%を達成すればOKというようにできるだけ高い目標設定をするようにしています。結果がどうなるかはまだわからないですが、今は2組で実施しているのですが、自主的に1on1を始めたり、一方の1on1や指導している様子をもう一方のペアが見学したりと、アクティブに事が進んでいます。それに、「教えるー教わる」を繰り返す内に、"師匠"と"弟子"の間には信頼関係が生まれ、そこにはとても価値があると思っています。

また、更なる採用強化の動きとして、非日本人の採用もトライしてみました。世界の人口に比べれば、日本語を話せる人は2%もいない訳で、「日本語話せないから採用しない」とか言語をボトルネックにしなくて良いのでは?…と考えたのです。特にプログラミングであれば、常に英語には触れるし、書かれたコードを見ればコミュニケーションは取れるので、概ね言語は問題にならないでしょう。しかし、そんな話をしている中で「Slackでのやり取りどうするの?」というのがチーム内ではコミュニケーションの観点で一番の不安要素であることがわかりました。たまたまKiaraというSlack上で自動翻訳してくれるサービスを見つけ、試しに入れてみたら、徐々にそういった不安はなくなっていき、求人票のマスト要件からも「日本語話せること」という記載は消えました♪(…結局は日本人で良い方が見つかり、実際に外国人の採用には至らなかったのですがw)

最後に、今の部署でも正式決定した「Elastic Assets」について紹介します。元々はランサーズさんが始めた取り組みに着想を得て、ランサーズさんにお話を聞きにいってスタートしました。「Elastic Assets」は、社員じゃなくても、フルコミットじゃなくても、教育事業や教育サービス、今のグロービスの開発内容に興味を持った人がいたら、どんどん手伝ってもらおうという仕組みです。今のチームも多くの業務委託メンバーで構成されているし、私自身もフリーランスの時もあり、今も副業をやっています。だから、業務委託だから何かがネガティブということはないし、プロジェクトあるいはタスクベースでやりたいことを好きな時にやれるとハッピーだと思っています。

以上のように、採用は日本人に限らなくてよく、業務委託メンバー間でも人間的な関係ができ、さらに社外の優秀な方と好きな事やっていける状況をつくっていく予定です。

最後に…

■■■■■は今は日本語のコンテンツのみですが、今後は英語のコンテンツも作り、市場も日本を飛び出て、世界に挑んでいくつもりです。そこで、どんどんチャレンジングに、新しいことをやっていく方いたら、是非一緒にやっていきましょー!

--

--

youhei19880130

CyberAgentに新卒で入社後、アドテク事業で事業開発からアドサーバーの実装を行い、インバウンド事業で起業後、ANAとの協業会社のCEOを務めてました。今はメインとしてグロービスでPMをしながら、静岡の商店街の活性化しております。